SAP CO経験者が不足する6つの理由|市場価値の高め方も解説

SAP CO経験者が不足する6つの理由|市場価値の高め方も解説

結論|SAP CO経験者が不足しているのは、難しいからではなく「構造的に増えないから」です。

この記事でわかること
  • なぜSAP CO経験者が市場で慢性的に不足しやすいのか
  • FIとCOで供給数に差が出る構造的な理由
  • 育成ループが回らない3つの要因
  • CO経験が市場価値に直結しやすい理由と、FI経験者への示唆

「SAP CO 不足」という言葉は、現場でも転職市場でもよく耳にします。

ただ、その理由を「COは難しいから」で終わらせている説明は多い。

難しいのは事実です。しかし、難しいだけなら他のモジュールにも該当する話で、それだけでCO経験者が慢性的に少ない理由にはなりません。

本質は別にあります。COは責任構造・役割構造・育成構造の3つが重なり、人が増えにくい構造になっているのです。

この記事では、難易度論ではなく構造の観点からCO経験者不足の理由を整理します。昇進や転職の判断は、そのあとでも遅くありません。


目次

まず結論|SAP CO経験者が不足しているのは「難しいから」ではなく「構造的に増えないから」

CO経験者不足の本質を先に整理します。

SAP FIは導入プロジェクト数が多く、経験を積める機会も豊富にあります。一方でCOは、同じ会計領域でありながら、上流設計の機会がシニア層に閉じやすく、ジュニアが経験を積みにくい構造になっています。

その結果、市場に出てくるCO経験者のうち「設計・要件定義まで担えるレベル」は、FIと比較しても明らかに少ない状況が続いています。

この不足は、COが難しいから生まれているのではありません。COはその性質上、人が増えにくい構造になっているからです。

「COを少しかじった人」は市場にいます。「設計責任を持てるCO経験者」は慢性的に少ない。この差が、CO経験者の希少性と市場価値の根拠になっています。


理由1|COは設定ではなく「業務設計」だから

COが他のモジュールと根本的に異なる点は、「設定する」ではなく「設計する」領域である点です。

FIは消費税・勘定科目・支払い条件など、法律や商慣行に沿ったルールをSAPに適用していく作業が中心になります。正解に近いものが存在し、業種を超えて横展開しやすい構造があります。

COはそうではありません。管理会計・原価計算・収益性分析は、企業ごとに正解が異なる領域です。どのコストセンターを設けるか、製品ごとの原価をどう集計するか、利益をどの軸で管理するか——これらはすべて、その企業の事業構造と経営方針に依存しています。

現場で見聞きした範囲では、COコンサルタントが相対するのはIT部門だけでなく、管理会計担当者・経理部長、場合によっては経営企画まで及ぶことがあります。設定の話ではなく、To-Be業務設計の話になるためです。

これがCOの本質的な難しさです。難易度が高いというより、業務設計責任が求められる点が他のモジュールと大きく異なります。


理由2|FIよりも「ルールを作る側」になりやすいから

FIとCOの違いを構造で整理すると、次のとおりです。

領域性質教科書化
FIルールを適用する側しやすい
COルールを作る側しにくい

FIは法定会計に近く、標準化・教科書化がしやすい領域です。SAPのベストプラクティスが機能しやすく、OJTで経験を積みやすい環境があります。

COは管理会計に近く、企業ごとの業務設計依存が強い。教科書に書かれた答えは存在せず、設計の是非は案件が終わってから評価されることも多い。

この違いが、育成の難易度と供給の差を直接生み出しています。FIは「ルール適用の型」を学ぶことで経験者を育てられますが、COは「設計判断の経験」がなければ上流に立てません。

設計経験は、経験させなければ積めない。しかし経験させるにはリスクがある。このジレンマがCO人材の育成を難しくしています。育成が進まないから供給が増えない。この構造が、CO経験者不足の根底にあります。


理由3|COは他モジュールとの接続理解まで求められるから

COはモジュール単体で完結しません。これも、CO経験者が育ちにくい構造的な理由の一つです。

原価計算・配賦設計・収益性分析は、PP(生産管理)・MM(購買管理)・SD(販売管理)・FIから上がってくるデータを前提として成立します。つまり、COの設計が正しく機能するかどうかは、周辺モジュールの動きを理解しているかどうかにかかっています。

CO単体の知識だけでは、要件定義の場で「この設計がPPの原価収集にどう影響するか」「SDの収益認識とどう整合させるか」という議論を主導できません。

現場で見聞きした範囲では、CO上流を担えるコンサルタントの多くは、PP・MM・SDの動きを少なくとも概念レベルで把握しており、FIとCOの両方を理解していることが前提になっています。

この「周辺知識の蓄積コスト」が、COを触り始めてから上流に立てるまでの時間を長くしています。単にCOを担当するだけでは上流経験者として評価されにくく、その分だけ供給が絞られます。


理由4|責任が重く、ジュニアに任せにくいから

COの設計ミスは、影響範囲が広い。これが、上流経験をシニアに閉じさせる最大の理由です。

配賦ロジックの誤りは製品別の原価計算に波及します。原価計算の誤りは利益分析に波及します。利益分析の誤りは経営判断に波及します。COは経営に近い数字を扱う領域であるため、設計ミスの代償が大きい。

そのため、ジュニアコンサルタントをCOの上流設計に入れることに対して、プロジェクト側もクライアント側も慎重になりやすい。

結果として、CO上流はシニアの独壇場になりやすく、ジュニアは月次処理の確認・テスト設計・データ移行の補助など、設計以外の作業を担当することになります。

これは「ジュニアに能力がない」のではなく、リスク管理として構造的に排除されている状態です。設計経験を積む機会がないまま年次だけが重なり、一定数は市場に出ても「設計経験のないCO経験者」として評価されます。


理由5|案件ごとの再現性が低く、経験が使い回しにくいから

FIの経験は、ある程度横展開が利きます。同じ業種でなくても、標準的な財務会計の設定経験は次の案件で活かしやすい。

COはそうではありません。製造業の原価計算設計と、サービス業の収益性分析設計では、論点が根本から異なります。前の案件で構築した配賦ロジックが、次の案件でそのまま通用することはほとんどありません。

前案件のCO知見は、次案件でそのまま使えない。

これが、経験年数と上流力の相関を弱くする原因の一つです。5年COを経験していても、業界が異なれば設計判断の場で通用しないことがあります。逆にいえば、特定業界のCO設計を深く積んだ人材は、その業界において代替が利かない存在になります。

再現性の低さは、CO経験者の「希少な専門化」を促進しますが、同時に「市場全体でのCO人材量が増えにくい」という構造を作り出しています。汎用テンプレ化できないスキルは、教えにくく、育てにくい。この点でもFIとは性質が異なります。


理由6|育成ループが回らず、経験者が増殖しないから

ここまでの5つの理由が組み合わさった結果として、CO人材の育成ループが回らない状態が続いています。

構造をまとめると、次のとおりです。

  • シニアが上流を占有する
  • ジュニアは設計以外の作業に配置される
  • 設計経験が積めないまま年次を重ねる
  • 市場に出ても「設計できるCO経験者」と評価されない
  • 次世代の上流担当が育たない

現場で見聞きした範囲では、COの上流設計を担えるコンサルタントが組織内に1〜2名しかいないという状況は珍しくありません。その1〜2名が案件を抱えすぎているか、そもそも外部調達に依存しているケースも多い。

外部依存が続くと、社内育成のコストを割く余裕がさらになくなります。育成に投資しないから人が育たない、人が育たないから外部依存が続く——この循環が、CO経験者の慢性的な不足を維持しています。

2027年問題(ECC6.0のサポート終了)に向けたS/4HANA移行案件の増加で需要は高まっていますが、供給側の育成ループは変わっていません。需給ギャップは今後も続くと考えられます。


だからSAP CO経験者は市場価値が高くなりやすい

ここまで整理した構造は、CO経験者の希少性と市場価値の高さを説明するものでもあります。

SAP人材不足は全体的に続いていますが、S/4HANA移行案件の中でCO経験者の需給ギャップは特に顕著です。移行案件ではCOの設計見直しが必ず発生しますが、そこを担える人材が市場にいません。

ただし、市場価値が高くなりやすいのは「COを触ったことがある」レベルではありません。

価値が認められやすいのは、次の経験を持つ人材です。

  • 原価計算・配賦設計の要件定義を主導した経験
  • PP・MM・SDとの接続を考慮したCO設計の経験
  • To-Be業務設計でユーザー部門・経営寄りの議論に参加した経験
  • 複数業種にまたがるCO経験(製造・サービス・プロセス等)

「COを少しかじった人」は市場にいます。「設計責任を持てるCO経験者」は少ない。

この差が、年収・単価の差として現れます。自分のCO経験がどの水準にあるかは、任せられる範囲で市場価値を確認すると整理しやすくなります。


FI経験者がCOで市場価値を上げるには何が必要か

FI経験者がCO領域で市場価値を上げたい場合、方向性は「CO知識の習得」より「設計経験の取り方」にあります。

まず、管理会計・原価計算の業務理解を深めることです。 SAPの設定知識より先に、「なぜその配賦が必要か」「原価をどの軸で管理するか」という業務論点を理解できるかどうかが問われます。設計の議論はSAPの操作より業務の論点が先に立つため、業務理解なしには参加できません。

次に、PP・MM・SDとの接続を意識することです。 FI経験者はFI・COの接続はある程度理解していますが、PP・MM・SDからCOへのデータフローはそれほど詳しくないことが多い。ここを押さえておくと、CO設計の議論に入りやすくなります。

最後に、設計経験を意図的に取りに行くことです。 月次作業のサポートやテスト設計だけをこなしていても、「設計できる人材」としての評価にはつながりません。要件定義・フィット&ギャップ分析・To-Be設計のフェーズに関わる機会を意識的に作ることが、市場価値の差を生みます。

「CO単体知識」より「COを含む全体設計」が市場で評価されます。自分の経験が現在どのフェーズに偏っているかを棚卸しすることが、最初の一歩になります。


SAP CO経験者不足に関するよくある質問

SAP COの需要は2027年問題以降も続くのか?

続く見通しです。S/4HANA移行が完了した後も、追加機能実装・業務改善・バージョンアップ対応は継続します。特に、S/4HANAでは管理会計領域のアーキテクチャが変わっているため(収益性分析の統合等)、S/4HANA環境でのCO経験者の需要は移行後も維持されやすい構造があります。

FI経験者がCO領域に移ることはどのくらい現実的か?

FI経験者はCO移行の土台がある点で有利です。財務会計の知識があることで、COとFIの接点(勘定連絡・決算整理等)の理解が早い。ただし、管理会計の思想と設計経験は別途積む必要があります。CO設計経験を意識的に取りに行く案件・フェーズ選択が、現実的な移行経路です。

CO経験者はフリーランスでも需要があるか?

現場で見聞きした範囲では、CO上流を担える人材はフリーランス市場でも引き合いがあります。S/4HANA移行プロジェクトでのCO要件定義・設計フェーズは、専門人材を外部調達するケースが多い。単価が上がりやすいのは運用・保守ではなく、設計フェーズへの参画実績がある人材です。


まとめ|SAP CO経験者が不足しているのは、難しいからではなく「増えない構造」だから

この記事で整理した内容を再確認します。

SAP CO経験者が慢性的に不足しているのは、COが特別に難しいからではありません。次の構造的な理由によって、人が増えにくくなっています。

  • COは設定ではなく業務設計であるため、ジュニアに任せにくい
  • FIがルールを適用する領域なら、COはルールを作る領域である
  • PP・MM・SD・FIとの接続理解が必要で、CO単体では上流に立ちにくい
  • 設計ミスの影響が大きく、シニア固定化が起きやすい
  • 案件ごとの再現性が低く、経験が蓄積されにくい
  • 育成ループが回らず、上流経験者が増えない

この構造が重なることで、設計責任を担えるCO経験者が市場で慢性的に少ない状態が続いています。

COは、狙う価値がある領域です。ただし、設定知識だけでは市場価値に結びつきにくい。設計責任まで踏み込んだ経験を積めるかどうかが、評価の分岐点になります。

自分のCO経験が市場でどう評価されるかは、年収が上がらない構造を理解すると、さらに整理しやすくなります。


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この記事を書いた人

日系大手コンサルファームでSAP FI/COを担当し、マネージャーまで経験。
昇格後の消耗をきっかけに「持続可能なキャリア設計」を再考。
実務特化×高単価という選択肢を軸に、SAPコンサルの構造的なキャリア再設計について発信しています。

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